顔や全身の「むくみ」には色々な原因が考えられる

むくみは浮腫(ふしゅ)とも呼ばれ、体の組織が持っている水分の処理能力を超えて、全身の様々な組織にリンパ液や組織液などがたまってしまっている状態のことを指します。

むくみは、飲酒や寝不足といった日常な習慣によって、誰にでも見られる体の変化であり、必ずしも加齢が原因で生じるものではありません。また、塩分の濃い食事や飲酒、寝不足などによってむくむことも多々ありますので、むくみが生じているからといって、すぐに病気や体の異常を疑う必要もないでしょう。

しかし一方で、理学療法の分野では、「むくみ・浮腫」は中枢性疾患や呼吸器・循環器疾患、腎疾患、さらには悪性腫瘍といった様々な病気の徴候の1つとしても警戒されており、顔のむくみが日常的に続くような場合は、その原因について考えることが大切です。(※1)

加齢によって顔がむくみやすくなる理由とは

健康な人であっても年齢を重ねていくと、老化現象の1つとして血流が悪化したり、細胞の代謝機能が低下したりしていくため、皮下組織が持つリンパ液の循環能力や老廃物の排出能力も弱くなり、手足や顔がむくみやすくなります。

とくに顔のむくみは美容面でも憂うつになりますし、いつでもすっきりした顔でいたいもの。病気とは無縁でも顔のむくみが生じないように、生活習慣を見直し適切なマッサージを行ったり、顔の筋肉を意識的に運動させたりすることで、むくみ知らずの若々しさを維持することが可能です。

顔のむくみがフェイスラインのたるみにつながる理由とは

顔の皮下組織の代謝機能や表情筋などの機能が弱まってしまうこと、さらに加齢と共に余分な脂肪を貯えるようになってしまうことも顔のたるみにつながります。顔のたるみと顔のむくみはお互いに影響しあい、悪循環につながります。なぜなら、顔がむくんでいる場合、皮下組織に余分な水がたまっているため、むくんでいる組織が重くなってしまいます。すると、さらに皮下組織や筋肉へ負担がかかりやすくなり、顔のたるみが進行してしまう可能性も高まるというわけです。

また、組織内の水分は重力の影響によって下へ落ちていくため、皮下組織や筋肉がしっかりと皮膚を支えていたとしても、あごの周りやフェイスラインに水分がたまりやすくなり、柔らかい“不要な肉”がタプタプとあご周りにたるみ、フェイスラインを崩してしまうのです。

加齢以外に顔がむくむ原因

むくみの原因としては、加齢の他にも様々なものがあり、特に年齢を重ねるにつれて複数の原因が組み合わさっていることも珍しくありません。公益財団法人長寿科学振興財団の公式サイトでは、むくみの原因としていくつかの事例が掲載されていますので、少しご紹介しておきます。

食生活や過度な飲酒

塩分や水分の多い食生活、過度な飲酒といった生活習慣によって、むくみのリスクが高まります。

過労やストレス

肉体的な疲労や精神的なストレスも、代謝機能を悪化させてむくみを促進させる原因の1つです。

心臓病・循環器疾患

心臓や血管に関連する病気によって、むくみが生じることもあります。

腎臓・肝臓・肺などの内臓疾患

腎臓病や肝硬変、肺高血圧症といった様々な内臓疾患によっても、顔を始めとして全身に浮腫が見られることがあります。

アレルギーや薬の副作用

アレルギー症状や、様々な治療薬の副作用によって、むくみが生じる例も少なくありません。

むくみが一向に解消されなかったり、進行したりする場合は、上記にあげたような疾病の初期症状の可能性も否定できませんので、かかりつけ医に相談するなどして、むくみの原因をはっきりさせておくべきです。病気は初期症状のうちに気付いて治療することで、その後の進行が劇的に変わります。自己診断せずに専門家の意見を聞くことが大切です。

◆参考サイト

※1：小野部純(2010),理学療法の歩み21巻1号2010年1月,「浮腫の基礎」[pdf]https://www.jstage.jst.go.jp/article/mpta/21/1/21_1_32/_pdf/-char/ja(2019年4月23日参照)

※2：公益財団法人長寿科学振興財団健康長寿ネット,「浮腫」[online]https://www.tyojyu.or.jp/net/byouki/rounensei/fushu.html(2019年4月23日参照)